傷ついた記憶

多分小学校低学年の頃のこと。父親にひどく怒られた記憶が2つある。父は普段仕事で忙しく、家事育児は母の仕事で父と遊んだ記憶はあまりない。当時よくあった亭主関白な家庭だったような気がする。そんな父に、些細なことで怒られた。たまたま機嫌が悪かったのかもしれないし、父が育った時代は体罰が当たり前だったから父が過去にされた躾と同じことをした可能性は大いにある。でも父に怒られた記憶はその2つしかない。私には1歳上の兄がいて、両方とも兄と共に怒られた。

傷ついた記憶の1つ目は、原因は全く覚えていないが父に怒られて家から出され、鍵をかけられて、窓の外でどんなに泣き叫んで窓をいくら叩いても入れてもらえなかったこと。どのくらい時間が経ってから家に入れてもらえたのか、泣き叫んだ後の事は全く覚えていない。ただ、その時感じた絶望感、もう何をしてもダメなんだ、私は受け入れてもらえないんだ、という奈落の底に突き落とされたような感覚、強い悲しみを強烈に覚えている。

2つ目は、父にビンタされたこと。こちらの理由は覚えている。地域のマラソン大会に家族で出場する日、兄と近くにあった遊具で遊んでいてスタートの集合時間に戻って来なかったこと。それでビンタされた。ビンタの記憶はものすごく強烈だ。痛み、驚き、恐怖、ショック。ただでさえ傷つきやすいタイプだった私には相当なものだった。幼い子にビンタなんてよくできたなと思う。きっと父も子供の頃自分の父親にされたんだろう。

母に怒られた記憶もほぼない。だから余計この2つだけ鮮明に刻み込まれている。

 

私が「良い子」であろうとし、そうでない自分を否定するようになったのはこの2つの出来事が影響しているのかもしれない。良い子じゃないと受け入れてもらえない、と学習したんだろう。母や父は自分の子供達とよく話す方ではなく、上記の怒られた記憶でも問答無用な感じがあった。両親がどういう気持ちでいるのかを聞かされた記憶はないし、私自身も自分の内面を話すことはなかった。悩みも本音も家族にすら打ち明けないで生きてきた。本当は、もっとお互いに心の内を出し合える関係に憧れていた。